ナレッジキャピタルと「アルスエレクトロニカ」とのコラボレーション展示&プログラム。
第2回目のテーマは「HYBRID – Living in Paradox – アート×生命科学の探究展」*1。
前回に引き続きワークショップに参加しました。
今回のアーティストはアルスエレクトロニカからオロン・カッツ氏と、
第1回目からこのナレッジキャピタルとのコラボレーションを統括している
アルスエレクトロニカ・フューチャーラボの小川秀明氏。
最近似たようなイベントに参加することがあるんだけど、
他のものに比べてもワークショップとしてのクオリティが高い。
少なからず運営側に回ることもあるので、その辺りの理由も考えてみた。
【00】運営体制
とは言うものの、ワークショップの企画自体が魅力的な点は必須だろう。
アルスエレクトロニカというネームバリューがある組織が主催するというインパクトは大きい。
加えて、一般的なワークショップでは、そのイベント自体で形式的には終わってしまう事も多いが、
そこでの内容が、The Lab.にて展示作品としても振り返る事ができるのも継続性を保つという意義が保てる。
あとは参加者のケアに対してどこまでリソースを割けるかが大きいのかなと。
当日の参加者と全体のレイアウトは下の図だが、参加者14名に対して、
メインの2名の他に通訳の女性が2名、その他ナレッジの運営側の方々合わせると
ほぼ参加者と同数のスタッフが常時滞在している。
よほどの事が無い限りそれらの方々が直接参加者に関わることは少ないと思われるが、
常に誰かに声を掛けられるという安心感は重要なのでは。
【01】Oron Catts
90年代プロダクトデザイナーとして活動。
その際にイタリアのデザイナー、Ezio Manzini氏の『デザインの将来?』というに出会う。
個々のオブジェクトのクオリティだけでなく、そのオブジェクトの存在する
環境やシステムへと、考えを及ばせるようになる。
例えば「庭」というものを考えても、その対象物をどう見るか、という新しい視点が重要だと気づく。
単なる「植物」としてだけでは無く、Care=ケアという言葉が強調されている。
それは愛情を持って、対象物を見る、ということ。
Manziniの思想は、言い換えれば、人工物を生命をもったモノとしてと捉えると言うこと。
そして、その思想を基点に生命をもったモノを人工物として捉えるという、
逆のアプローチを取って活動をしている。
これは別に全く新しいアプローチでは無いかもしれない。
1985年にH.G.ウェルズの小説などでも良く出てくるアイデアだ。
【02】Life as Technology
Life as Technologyという視点で、もう一度物事を見てみよう。
生命を、「神秘的」な視点から一旦離して捉え、その可能性を最大化するように。
その神秘性、倫理感といった私たちが普段あたりまえに持っている枠を、
一旦取り外すことでいろんな物事が見えてくるはず。
(豚肉をパッキングする工場の絵を見せながら)
フォードが聞きつけた工業化の話。
・豚というひとつの生命をもった身体を分解 -> 豚肉
・バラバラのものを組み立てて製造する -> 自動車
こうしたアプローチはその後、損傷した身体を人工臓器で補うという
90年代のバイオロジーとして確立していく。
自分はそれを逆からアプローチしようと試みた。
心臓は機能面からポンプとして捉えられていたが、そのポンプ自体が成長したらどうなるか?
このロジックを頭に置きながら、プロダクトのアイデアを出して欲しい。
【03】WorkShop
Tissue Engineering*3の一般的な例は、
この手法によって培養した細胞を体内に入れ、骨にくっつけて成長させるなど。。。
そしてCattsはその細胞を「体外」に配置して成長させるプロダクトを作品として制作。
このような「生命をツールとして使う」という手法は、
人類の歴史上まだまだ始まったばかりのもの。今後の可能性は大きい。
小川氏:今回のワークショップでは、単なるアイデアだけでは無く、
上の3つのような、実際にどう製造し、そのプロダクトが社会に与えるインパクトが
どのようなものか、ストーリーで語るようにとアドバイス。
本当に新しいアイデア、サービスは
社会制度が変わるほどのインパクトがあるはず。
単に利益をもたらすだけではなく、その社会や文化に対して、
大きく価値観を変えるようなものになると好ましい。
【04】Closing remarks
Catts:興味深い事に、「生命」という言葉は、世界中の殆どの文化で、ひとつの言葉で言い表せる。
(色や雨という言葉が文化毎にさまざまな表現を持つのとは対称的だ。)
これまで「生命」というと、無機物の他、半生命とう意味でsemi LIFEといったものが
語られてきたが、私たちのアプローチによるバイオロジーを突き詰める事で、
New LIFEというこれまでに無かった、生命を創り出せるのでは。
そしてその時には「LIFE」では無い、新しい言葉による定義が必要になると思う。
そういった事を目指して今後も活動をしていきたい。
小川氏:日常の中で、テクノロジーの進化が私たちの人間らしさを損なっている面がある。
気づいたら、機会が自分に置き換わっているような錯覚を覚えることはあるのでは。
Cattsの機会を生命有るモノとして捉える、というアプローチは、
これらの傾向を覆し、原初的な人間らしさの再獲得に繋がると思う。[/vc_column_text][/vc_column][vc_column width=”1/3″][vc_column_text disable_pattern=”true” align=”left” margin_bottom=”0″]